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教育と貧困の問題に、 真っ向から取り組んでいきたい


私がTeach For Japanと出会ったのは、本当に偶然でした。今は、この出会いに感謝しています。今年(2014 年)の8月に団体の存在と活動内容を知った瞬間、こう思ったんです。「これこそ、今、私がやりたいことであり、やるべきことだ!」と。それですぐに団体の方とコンタクトをとり、直接お話を聞かせていただいたんです。そして、Next Teacher Programのことを知ったその日には応募を決めたほど。ここまで即断即決をしたのは、このプログラムが私のこれまでの関心とその時点での関心、そしてこれから描くキャリアに必要なことのすべてを満たしてくれるものだと感じたからです。

 

私は5月に留学先から帰国をし、自分の進路について真剣に考えているタイミングでした。教育についてもっと専門的に学んでいきたいと考えて、海外の大学院進学を検討していましたが、学校現場で教師として教えた経験があった方が、より具体的な研究成果につながるのではないかと思っていました。そしてなにより、学校現場の経験がないまま研究を続け、教育について論じることには、私自身、多少の引け目もあったんです。だから、教壇に立つ経験は、これからのキャリアを考えたときにも、とても重要で意味のあることだと感じました。

加えて、私の関心は、教育の中でも、とりわけ社会的な弱者に向かっていました。日本でも、最近では社会的な「格差」の問題について取り上げられますが、私は、社会的な格差の拡大に、教育が図らずして加担してしまっているのではないかという問題意識を持っています。

ですから、現在、弱者と見なされるような人たちには十分な教育環境が与えられるようにすることは、重要の課題ではないかと思っています。この点で、TFJが取り組んでいる社会課題は、私自身の問題意識と全く同じと言っていいほどでした。

 

私は、母が高校の英語教師だったので、小さい頃から母が教師として働いている姿を見ていました。感じていたのは、「教師って、なんて大変な仕事なんだろう」ということ。しかしその一方では、母がやりがいと使命感を感じながら働いていることも感じていました。そうした環境で育ったからか、教育への関心を持ったのは自然ななりゆきだったと言えます。ただ、「教育への関心」といっても、私が関心を持っていたのは、もっぱら開発途上国の子どもたちへの教育です。

それは、小学生のときにマザー・テレサの伝記を読み、「世界にはこんな献身的な生き方ができる人がいるんだ」と感銘を受けたことがきっかけでした。このときの思いが、ずっと心に残っています。また、実家の近所にはJICA(国際協力機構)のオフィスもあり、夏休みに開催された子どもを対象としたイベントに参加したことも何度かあります。これらの経験が相まって、自分の将来の夢として「教育を通じて、社会的弱者を支援すること」や、「開発途上国に関わること」を、漠然と描いていました。

 

中学校2年生のときに、家族で旅行したニューヨークでの経験も、印象深かったですね。当時、街中のあちこちでホームレスの姿が多く見られました。これまでは、「貧困」といえば開発途上国だけの問題のように思っていました。しかし先進国アメリカの中心都市であるこの街に、「社会的弱者」がこんなにもいるんだ、と。これらが私にとってのある種の原体験となっています。この原体験によって私は、「国際的」「開発途上国」「教育」をキーワードにして大学を選びました。そして現在、今の大学・学部に在学しているわけです。

とはいえ、それはまだ関心のあり方としては漠然としたものにすぎませんでした。それがはっきりとしたものとなったのは、大学でのさまざまな経験を経てからのことです。とりわけ、2013年9月から2014年の5月までの約9ヶ月間の交換留学は、私に多くの気づきをもたらしてくれました。

 

留学先のアメリカで私に大きな気づきをもたらしてくれたのは、2つの経験です。
1つは、移民の子どもたちのための学習支援ボランティアをしたこと。
それまでの私は、現在の社会に教育格差が存在しているということは学んでいたものの、自分の実体験として、経済的な「格差」と教育の格差との関係を感じたことはあまりありませんでした。
むしろ、「勉強ができる・できないって、本人の努力や能力の差なのではないか」くらいに考えていました。

ところが、留学先で目にしたのは、移民の子どもたちが、小学校3年生なのに一桁の足し算もままならない現実。彼ら・彼女らの家庭は、生活していくのに精一杯で、子どもの教育に関わることなどできない環境に置かれていました。

それに加えて言語の問題(例えば、家庭ではずっとスペイン語で会話をしてきたが、学校では英語で授業が行われるなど)もあって、学校の勉強にはほとんど付いていくことができません。そして、それにも関わらず、それは本人や家庭の「努力」が足りないからだとみなされてしまう、ネオリベラリズムの社会思想。こうして、今ある格差が再生産されていってしまう過程を目の当たりにしました。
これは、「豊かな社会」や「よい教育システム」とは、かけ離れている。私はそう感じたのです。

 

そしてもう1つの経験は、各国の教育政策をテーマにした講義を受けたこと。この講義によって、私のこれまで教育について感じてきた思いに、明確な輪郭が与えられたように感じました。この講義の趣旨は、一言で言えば「一国の教育政策をマクロな視点で見ると、いずれの国も、ほぼ共通したグローバルな観点からデザインされている」ということになるでしょう。

 

私の問題意識の根底は、社会的弱者とされる人たちを教育によって援助したいということでしたが、その場合の「社会的弱者」が抱えている問題は、俯瞰して見ると、どの国でも共通しているものなのだと知りました。すなわち、「貧困と教育」という問題です。私が目の前の子どもに対して感じる「勉強ができない子どもをなんとかしてあげたい」というような思いも、マクロな文脈と無縁ではないと感じました。

このような2つの経験を経て、私は、自分はこれから教育に関わるにせよ、一人の教師として目の前の子どもたちだけに関わる「以外」の方法がないかと模索をするようになっていました。

 

そして、留学先から帰国したのが5月。就職活動を始めるには遅い時期でしたが、既に私は自分が進むべき進路は民間企業ではないと感じていました。ただ、そうはいっても明確に「これだ!」というものがあったわけでもありません。とはいえ、明確な思いもありました。それは、海外への留学で感じていた問題意識は、私自身がこれから解決に携わっていきたい課題だということ。それで、より専門的に学ぼうと、今度は海外の大学院への進学を考えていました。

 

一方で、私はこれまで、「社会的弱者の支援=海外での活動」を無意識の前提としていました。しかし、帰国してからあらためて日本の現状に目を向けると、海外に比べると見えにくくはあり、かつ、これまでの自分の人生で身近にはさほど存在していないと感じていましたが、「教育と貧困」の問題が日本にも確かにあるということに気づかされました。

 

TFJを知ったのは、ちょうどその時でした。最初は海外の大学院進学についての情報を「海外大学院」「教育」などをキーワードにインターネットで検索していたときに、偶然TFJの代表である松田さんの存在を知り、その活動を知ったのです。そこからフェローに採用されるまでは、冒頭でお話ししたように、本当にあっという間でした。

 

先日、3週間の教育実習を終えました。塾講師や家庭教師は経験してきましたが、学校現場は初の経験。想像以上に、先生方が忙しくしていらっしゃったことと、そんな中でも常に全力で生徒に向き合っていらっしゃった姿が印象的でした。

 

そして、思いました。私も同じように、いえ、それ以上に頑張らねば、と。
TFJのフェローとして、社会的な課題を解決したいという志を持って教育現場に臨むわけですが、その思いは、毎日の実践や、目の前の生徒に向き合うことによって実現されていくわけです。ですから、まずは教師として、早く一人前の働きをこなせるようになることが大前提です。そして、一日でも早く、TFJの教師ならではの付加価値を出していけるようになりたいと思っています。

 

また、多様なキャリアを持つTFJのフェローコミュニティの中に、私は大学を卒業したばかりの立場で飛び込んでいくことになります。皆さん、キャリアを生かしたそれぞれの強みを持っていらっしゃることと思うのですが、その中で私は何を果たしていけるかは、最近よく考えることですね。

 

一つ、私が有力な候補だと思っているのは、演劇。実は私、大学では、幼稚園や小学校に参加型ミュージカルを届けるサークルに属しているんです。教育と演劇とは、実は親和性が高いんです。近年では、学校教育の中に積極的に取り入れていこうとする動きも見られますからね。それに加えて、培ってきた明るいキャラクターも、でしょうか(笑)。今から、卒業までの時間を、より良いTFJのフェロー、そしてより良い教師になるために、有意義に使っていきたいです。

 



磯フェロー

磯フェロー 2015年度(第3期生)

国際基督教大学教養学部

国際基督教大学教養学部に在学(2015年3月卒業見込み)。もともと教育に関心を持っており、大学の交換留学先での経験をきっかけに、教育と貧困の問題の解決に取り組みたいと考えるようになった。海外大学院への進学を検討する中でTFJの活動を知り、第3期フェローに応募、採用された。

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